今求められる緩和ケア
対談イメージ画像 恒藤 暁×玉井知英 対談
対談イメージ画像 恒藤 暁×玉井知英 対談
緩和ケアを提供する場所は病院だけではない
京都大学名誉教授 恒藤暁先生
緩和ケアを提供する場所は病院だけではない

 ⻑年専⾨医として緩和医療に携わってきた私は、がん治療の進歩や医療制度の変化により、患者様が求める緩和医療や緩和ケアも変わりゆくのを肌で感じてきました。

 まず実感するのは、がん患者様の⽣存期間が伸びるに伴い「がんになってからも⽣活の質(QOL)を⾼く保つこと」がより重視されるようになってきたということです。それに伴い、⾝体的な痛みの緩和はもちろんのこと、患者さんの⼼理的・社会的な苦痛に対してもアプローチして、その⼈らしく過ごせるよう総合的に⽀援していくことが、これまで以上に求められるようになってきました。

 次に強く感じる変化は、緩和医療や緩和ケアの提供場所が病院から、在宅や施設へも広がってきていることです。在宅ケアの普及により、最期まで病院で過ごすのではなく、在宅や在宅相当の施設へ療養の場を移して⽣活することもできるようになってきました。

 在宅緩和ケアでも総合的アプローチのために多職種連携は⽋かせません。医師、看護師、介護職、ケアマネージャーなど、さまざまな専⾨職が協⼒しあうことが必要です。そういった専⾨職が地域コミュニティと連携し「患者様を中⼼としたケア」を提供していく。それが在宅緩和ケアでの質の⾼さに繋がると考えています。

病院でも自宅でもない「治療を受けながら生活する場所」
ゆいの希代表 玉井知英
病院でも自宅でもない「治療を受けながら生活する場所」

 私は医師になり20数年が経ちますが、「病院にはいられないが、家にも帰れない」⽅が⾮常に増えてきていると感じます。病院からは退院を迫られるが、⼊院中に⾜が弱ったり認知機能が低下したりして、⾃宅では元のように暮らせない⽅は本当に多いです。

 そのような時代背景を受けて、緩和ケアを⾏う場所として新たに求められるようになってきたのが、ホスピス住宅・施設型ホスピスなどと⾔われる施設です。病院でも⾃宅でもない、緩和ケアを提供する「第3の場所」として、学会などでも取り上げられるようになっており、ゆいの希もその⼀つと⾔えます。

 ⼀般的に病院は「治療を受ける場所」で、⾃宅は「⽣活する場所」であるのに対し、ゆいの希は「治療を受けながら⽣活する場所」です。医療者がいつも⾝近にいて助けを求められる環境でありながら、病院のような制限がなく⾃由に暮らすことができます。居室が広いので、多くの⽅が座椅⼦や観葉植物などお好きなものを持ち込み、ご⾃分らしくお部屋をアレンジされています。

 また、ゆいの希は「がん治療⽀援型ホスピス」という他にはない特徴があり、重篤な副作⽤が出ていないかをチェックしてがん治療医に報告したり、通院にかかる費⽤の⼀部を施設が負担したりすることで、⼊居者様ががん治療を続けられるようサポートしています。がんの⽅が病期に関わらず、その⼈らしく安⼼して暮らせるように⽀援することが、これから求められる緩和ケアの形だと考えています。

対談イメージ画像 病院ではできない緩和ケア。がん治療中から終末期まで安心して暮らせる家 病院ではできない緩和ケア。がん治療中から終末期まで安心して暮らせる家

 緩和ケアはターミナルケアに限定されるものではなく、早期から⾏うべきものですから、ゆいの希のように治療期から終末期まで安⼼して過ごせる場所の存在は⼤きいですね。

 少⼦⾼齢化が進み、多死社会である現代は、終末期のケアや医療・介護をどのように提供していくかが重要な課題です。病院の平均在院⽇数はどんどん短縮化されており、急性期治療のための⼊院はできても、がんや慢性疾患などの⻑期的治療とケアを病院で継続することは困難になってきました。

 私も実際にゆいの希を⾒学させてもらいましたが、居室の広さや明るさ、スタッフの穏やかで優しい雰囲気が印象的で、ホスピスの語源が「ホスピタリティ(おもてなしの⼼)」であることを思い出しました。

 ゆいの希が優れていると思うのは、全ての⼊居者様を⽟井先⽣が責任を持って多職種と共に診ておられること、そしてご家族の⽀援にも⼒を⼊れているところです。ご家族のための寝具や⾷事の無料提供、⼤浴場やカフェの併設など、ご家族の居⼼地にまで配慮した環境づくりをここまでされている施設は多くないでしょう。患者様を⽀えるご家族の負担は計り知れません。患者様だけでなく、ご家族のQOLも⾼く維持できるよう包括的ケアを提供しているゆいの希は、これからより重要となると考えています。

京都大学名誉教授 恒藤暁先生

恒藤 暁 つねとう さとるゆいの希顧問

1985年 筑波⼤学医学専⾨学群卒
1993年 英国St Christopher's Hospiceで研修
1996年 淀川キリスト教病院ホスピス⻑
2001年 ⼤阪⼤学⼤学院⼈間科学研究科 臨床死⽣学講座 助教授
2006年 ⼤阪⼤学⼤学院医学系研究科 緩和医療学講座 教授
2014年 京都⼤学医学部附属病院 緩和医療科 教授
2024年 京都⼤学⼤学院医学研究科 名誉教授

 著書・訳書 :
『Whole Person Care 実践編:医療AI時代に⼼を調え、⼼を開き、⼼を込める』(三輪書店)
『Whole Person Care 教育編:マインドフルネスにある深い気づきと臨床的調和』(三輪書店)
『緩和ケア 第3版 (系統看護学講座(別巻))』(医学書院)

1985年 筑波⼤学医学専⾨学群卒
1993年 英国St Christopher's Hospiceで研修
1996年 淀川キリスト教病院ホスピス⻑
2001年 ⼤阪⼤学⼤学院⼈間科学研究科
臨床死⽣学講座 助教授
2006年 ⼤阪⼤学⼤学院医学系研究科
緩和医療学講座 教授
2014年 京都⼤学医学部附属病院
緩和医療科 教授
2024年 京都⼤学⼤学院医学研究科 名誉教授

著書・訳書 :
『Whole Person Care 実践編:医療AI時代に⼼を調え、⼼を開き、⼼を込める』(三輪書店)
『Whole Person Care 教育編:マインドフルネスにある深い気づきと臨床的調和』(三輪書店)
『緩和ケア 第3版 (系統看護学講座(別巻))』(医学書院)